三段論法による舞台設定

科学技術日本語の第4節「定義文」に、段落の冒頭に置く定義文はアリストテレスの三段論法に則って構成すると書いた。三段論法はすべての学問の基本だから、最も重要な定義文はこれに従うべきとした。この点をもう少し掘り下げてみよう。

図1 三段論法のベン図

 

三段論法においては図1のように、Bという大項目の中でCという性質を持つものとしてAが定義されている。ここで重要なのは、Bという大項目の中でCという性質を持たないが他の性質はほぼ同じDの特性が、Aと対比されながら議論され、Cという性質の意味と影響を際立させつつ議論する舞台が、三段論法によって設定されていることだ。

さらに学問が発展すれば、図2のように、Bという同じ大項目に、違う性質C’やC’’を持つ別の項目群A’やA’’が存在している場合が考えられる。この場合、違う性質C、C’、C’’を持つが他はほぼ同じ項目群A、A’、A‘’の特性が、それぞれの対比において詳しく論ずることができる。

図2 三段論法のベン図の発展形

このように最初に三段論法で議論の舞台を設定すると、後の議論が精密かつ正確にできる。