第9節 推敲

これまでに述べた手続きで製作した段落を、論文や報告の一部として仮に埋め込み、推敲の過程に入る。推敲過程での注意事項を以下に述べる。

9.1. 其の省略

各段落の冒頭に置いた定義文の関係代名詞「其」とそれに付属する副詞を省略し、3節で述べた便法を使って滑らかな日本語に変える。慣れれば、最初から「其」がない形で書き下してもいいが、初心者は、論理構造を確立するため其を省略しない三段論法に則った基本形から始めることを筆者は勧める。

9.2. 同語反復の解消

一つの文に繰り返し同じ語が使われていないか確認する。特に、定義文とそれに続く付置文では同語反復が発生しやすい。よく検討し原則として同語反復を解消する。

9.3. 動詞の能動態を使う

動詞は、できるだけ能動態の肯定形の動詞を用い、勇気を持ってきっぱりと言い切る努力をする。受動態は、能動態よりも弱い表現である。

9.4. 肯定形の動詞を使う

否定詞「ない」はどこまでを否定しているかについての曖昧さが付きまとうことが多い。可能ならば、肯定形の別の動詞を用いる。

9.5. 曖昧文末の消去

「考えられる」や「可能性がある」、「思う」などの曖昧化する語が文末にないか確認する。必要がなければ、勇気をもって消去する。どうしても曖昧化しなければならないと感じたときは、文全体の消去も検討する。例えば「考えられる」は、「XX分野ではYYと考えられているが、ZZ分野ではそうではない。」というような構文以外では、多くの場合必要ない。

9.6. 読み合わせ

論文や報告を通して音読し、気になる箇所を修正する。この時、音読することが大事で、黙読では見過ごしてしまうような間違いを、耳からも音情報として入力することによりよりはっきりと認識できる。また、論理展開に無理がないか、大きな逆茂木構造がないかも確認する。同時に文体の統一、用語の揺らぎなどもチェックする。最終的には複数人で音読しながら読み合わせて、最終形態に仕上げてゆく。