第5節 展開計画文

次に、「定義文」の後には「展開計画文」が続く。この後、主題となっているAに関する記述を分解して記述する。その分解の仕方を「展開計画文」で述べる。事象、事物、概念を分解して理解する手法は、デカルト以来の科学技術の伝統だ。それに従う。分解の方法には1)空間分割する、2)時分割する、3)分類するの3つがある。

5.1. 空間分割

まず、事物を空間分割する手法は科学技術分野で一般的に使われる。この場合、展開計画文は、

AはA1、A2、A3、A4からできている。

AはA1、A2、A3、A4に分けられる。

などとする。この後に、各部分A1、A2、A3、A4の記述がこの順番でなされる。分割する事項の数は4以下が望ましい。分割個数が4を超える場合の対処法は、本節の後半で述べる。

Figure  3. 計算機の構造

例題 6 Figure  3を参考にして、計算機の空間分割の展開計画文を作りなさい。

計算機は、中央演算装置、主記憶装置、入出力装置、そして、それらを相互につなぐバスからできている。

Figure  4. ミトコンドリアと葉緑体の構造(細胞の分子生物学第3版、Bruce Alberts、Dennis Bray、Julian Lewis、Martin Raff、Keith Roberts, James D. Watson(著者)、中村桂子、藤山秋左夫、松原謙一(監訳)、1995、ニュートンプレスp569を元に改変)

練習問題 6 Figure  4を参考にミトコンドリアと葉緑体の空間分割の展開計画文を作りなさい。

5.1.1. 分割数が4以上の場合

前に述べたように、分割する事項の数は4以下が望ましい。事物Aが複雑な場合、分割される部分は4より大きくなることがある。その場合は、まず4以下の数のグループにまとめ、それぞれ階層的に記述する。つまり、A1についての定義文

A1はAの中でA1-1という属性を持つ。

に続いて、

A1はA1-1、A1-2、A1-3に分けられる

と階層的に展開計画文を配置し、それぞれの小項目の記述を続ける。A1に関する記述が一通り終わった後で、A2について同様に記述する。

 事物Aが非常に複雑で、記述が3階層以上にわたる場合は、それに対応した節、小節などの階層を設けて対処する。

Figure  5. ヒト精子の構造(ギルバード発生生物学、スコットF.ギルバート(著者)、阿形清和、高橋俶子(訳者)、2015、メディカル・サイエンス・インターナショナルp123を元に改変)

例題 7 Figure  5を参考にヒト精子の空間分割の展開計画文を作りなさい。必要に応じて階層的に作ること。

ヒト精子は、頭部、中片部、尾部、そして終末部に分けられる。

頭部には、先体小胞と核がある。

中片部には中心小体とミトコンドリアがある。

Figure  6. 直翅目の体制図(日本百科大事典、原色昆虫図鑑、1966、小学館、p346をもとに改変)。

練習問題 7 Figure  6を参考に直翅目の体制の空間分割展開計画文を作りなさい。必要に応じて階層的に作ること。

Figure  7. 4ストロークエンジンの構造(初めて学ぶエンジン技術と機械工学、エンジン技術者教育研究会、2007、コロナ社p5をもとに改変)

練習問題 8 Figure  7を参考に4ストロークエンジンの空間分割の展開計画文を作りなさい。

Figure  8. ニューコメンエンジンの構造と動作原理(蒸気機関車メカニズム図鑑、細川武志、1998、グランプリ出版p10を元に改変)

練習問題 9 Figure  8を参考にニューコメンエンジンの構造を説明する空間分割展開計画文を作りなさい。

 

 

5.2. 時分割

時分割は、主題Aが過程や機構である場合によく使われる。この時、展開計画文は、

Aは、A1、A2、A3、A4の段階に分けられる。

などとする。この後、各段階A1、A2、A3、A4の記述がこの順番でなされる。事象Aが複雑な場合、分割される段階は多数に及ぶ場合がある。その場合は、まず4以下の数のグループにまとめてそれぞれを記述する。そして、各グループの記述を空間分割の場合と同様に階層的に行えばよい。

Figure  9. ダーウィンは、サンゴ礁の形成と発達を、島の沈降によって説明する沈降説を提唱した(http://dges.es.tohoku.ac.jp/iryulab/iryulab/Research9.htmlの図をもとに改変)。

例題 8 Figure  9を参考にダーウィンが提唱したサンゴ礁の発達段階を説明する時分割計画展開文を作りなさい。

サンゴ礁の発達段階は、裾礁、堡礁、環礁の3つに分けられる。

Figure  10. 4ストロークエンジンの動作(初めて学ぶエンジン技術と機械工学、エンジン技術者教育研究会、2007、コロナ社p5‐6を元に改変)

練習問題 10 Figure  10を参考に4ストロークエンジンの動作を説明する時分割計画展開文を作りなさい。

練習問題 11 Figure  8を参考にニューコメンエンジンの動作原理を説明する時分割展開計画文を作りなさい。

 

 

5.3. 分類

分類による記述を用いる場合、展開計画文は、

AはA1、A2、A3、A4に分類される。

とする。この後に分類群A1、A2、A3、A4がこの順番で記述される。必要に応じて、分類の記述は階層的に詳細になってゆく。分類記述の最後には、うまく分類できない例外的な群の記述を行う。また、まだ全く分類や整理が進んでいない場合には、Aに属すると思われる例を羅列する。

例題 9 Figure  9を参考に、サンゴ礁を分類する展開計画文を作りなさい。

サンゴ礁は、堡礁、裾礁、環礁の3つに分類される。

練習問題 12 バラ科の植物を分類する展開計画文を作りなさい。必要に応じて、図鑑などの助けを借りてよい。

練習問題 13 ネコ科の動物を分類する展開計画文を作りなさい。必要に応じて図鑑などの助けを借りてよい。