第3節 段落
科学技術日本語は、複数の段落(パラグラフ)で構成される。一つの段落は、ただ一つの事物、事象、もしくは概念を記述する。一つの段落は「定義文」で始まり、その後に「展開計画文」が続き、さらに複数の「記述展開部」が展開計画文に従って配置される。記述展開部の一部は別の段落に分割される場合がある。
一つの段落で、一つのことのみを記述する重要性については木下(1981)が繰り返し強調している。初心者は、関係のない複数の事象を一つの段落で記述しがちである。複数の事象を書きたくなったら、その数だけ段落の数を増やし、それぞれの段落は一つ事象のみを記述する。そして、それらの間の相互関係を展開計画文で記述する。
段落冒頭の定義文において、その段落で言いたいことをいきなり頭ごなしに書くことについては、初心者が抵抗感を持つことがあるが、気にする必要はない。定義文で述べた結論の理由付けは、それに続く展開計画文や記述展開部で追々記述されるからだ。読者が読み進むとき、それが支持するべき結論を念頭に置いておいた方が、理解しやすい場合が多い。
参考文献
1)木下是雄、1981、理科系の作文技術、中央公論社